2021-03-17

納冨栄太エピソード-陶芸家時代

東京ドームの陶芸展で

 東京ドームの陶芸展に行き、たまたま入ったブースに見慣れたブドウの絵皿を目にした。嬉しさのあまり係りの方に納冨栄太先生の作ですよねと尋ねる。12万円の値がついていた。すぐに先生に電話すると「買ってはダメだ」陶芸 の世界に虚しさを感じていた。先生らしい言葉である。 

*M.H様の手紙から

                                       

大臣賞を受け

栄太氏いくつの受賞を受けたかもわからない。たった二人だけずっと親交を続けていた同じ世代の友達がいた。 その一人 K 先生の証言である。ある時農林水産大臣賞を取った。その時価格もつけられた。ところが同じ陶芸 作家たちが困惑したと言う。なぜなら栄太氏がトップを受賞したにもかかわらずあまりに安く値段をつけてし まったため他の作家たちが値段をつけられなかったのだ、と K 先生の瞳は嬉しそうだった。

もう来ちゃいかん

 有田で栄太氏の晩年、毎年安否を確かめる目的でもあるが訪問していた今は校長先生となっている卒業生がい た。一人あばら家での老人の生活を不憫に思い、感謝と敬意を込めた訪問だったに違いない。栄太氏がだんだ んとできない事が増えていくことを見守るかのような温かい訪問に「もう、来ちゃいかん。」迷惑をかける わけにはいかないのだ。「これは自分自身への戒めのためだ。」と、工房には空のカップ麺の山ができていた。

*Y.T氏の証言

ストーブの上

有田の冬は寒い。冬はガスストーブを台所につけテーブルでごろんと休むのがお決まりのスタイルだ。そろそろ 80 歳という頃、紙パンツが必要になった。ある冬の日もガスストーブをつけていた。その上方に何かをヘル パーさんが発見する。じょっくりとしたパットが綺麗にハンガーにかかっていた。今にもしずくが落ちそうだ。 栄太氏、尿を吸い取ったパットを人に見せるのは失礼ではないが、濡れたままゴミに出すのは失礼なのだ。

隣人

いまではラインや SNS で連絡をする。顔を合わさなくてよいので気楽なツールだ。ところが先駆けて栄太氏も隣の家になんとハガキでそうしていた。隣の家を通り越したところにあるポストまで歩いて。ハガキは日常のつぶや きが書かれていた。

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コメント2件

  • T.K先生 より:

    ある時農林水産省大臣賞を受賞された。数ある陶芸家のなかでもトップの賞である。栄太氏、それでも何千円かの値段しかつけず他の陶芸家が困ったという話を笑ってしていた。

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